国の内外から投資を呼び込むため、大胆な規制緩和や税制面の優遇を行う国家戦略特区。東京五輪を6年後に控え、魅力ある日本の街づくりと経済活性化を更に加速する効果が期待されています。住宅・不動産業界にとっては、旅館業法の特例による「新たな空室対策」といった大きな目玉も。政府は14年3月28日、東京圏、関西圏、新潟市、兵庫県養父市、福岡市、沖縄県の6地域を特区区域に指定しました。「医療」「農業」「雇用」など、推進していく事業の大まかな分野は地域ごとに想定されていますが、具体的計画内容は、「早ければ夏までに決めたい」(新藤義孝総務大臣=国家戦略特区担当)としています。
東京圏では、「ビジネス街の街並みを一変させ、国際標準のビジネス空間へと改造」するプロジェクトを誘導します。その代表例が環状第2号線の整備が加速している東京・虎ノ門エリア。6月には地上52階建ての「虎ノ門ヒルズ」が開業するほか、地下鉄日比谷線の新駅構想も持ち上がっており、浜松町駅、竹芝駅、品川駅、渋谷駅周辺の大規模開発の推進策も提案されています。
横浜駅周辺地区では、オフィスビルや商業ビルの共同建て替えなどを促進するため、業務床としての容積率移転を可能とします。また、都心居住推進を図るため、高規格な住宅供給を行う場合に容積率を付加(300%分)するとともに、一部の業務商業施設などの容積率を駅直近エリアの事業に移転可能とするなど、老朽化した建築物の再生を行い職住近接を目指す考えです。
また、不動産業界にとって、今回の国家戦略特区の目玉の一つが「旅館業法の特例」です。この特例により、賃貸マンションの空室などを短期滞在型の宿泊施設として利用できるようになります。「空室対策」のメニューに、宿泊施設が加わった格好です。旅館業法上、宿泊施設として利用するためには、フロントの設置や衛生上の検査が必要となります。今回の特区法では原則として7~10日以上宿泊することを前提に、旅館業法の適用を受けることなく、住宅を宿泊施設として利用できる特例を定めました。施設利用者については、外国人だけでなく日本人も想定されます。「25m2以上」の広さの要件は設けられていますが、各自治体に一定の裁量は認められています。東京都では、宿泊期間を「4日以上」に短縮すること、また、シェアハウス形式の住宅も認めるよう要望しています。今後、具体的なエリアなどが決定されますが、不動産業界では、空室対策として幅広く活用されそうです。急増している空室の新たな利活用を提案するモデルでもあり、物件を保有しているオーナーの新たなビジネスチャンスとして期待されています。