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東京圏家賃相場、マンションは小幅上昇〝リノベーション〟に活路も

住宅新報社が年2回実施している「4大都市圏家賃調査」によりますと、東京圏(14年3月1日時点)のワンルームタイプの平均賃料は7万914円で前回調査(13年9月1日時点)に比べ0.62%上昇しました。1LDKから2DKタイプのマンション平均賃料は10万6034円(前回比0.12%上昇)、2LDKから3DKタイプの平均賃料は13万3038円で同0.24%の上昇となり、前回調査に引き続き、マンションは全タイプの平均賃料が前回より上昇しています。今回の調査で特徴的なのは、地域的な上昇・下落がなく、地域の中のある特定場所のみで上昇や下落があること。例えば、京王井の頭線の久我山はワンルームで3%以上の上昇、京王線の聖蹟桜ヶ丘では1LDKから2DKタイプで7%以上の上昇ですが、一方で、仙川はワンルームで2.6%の下落となっています。エリアや路線だけで家賃が設定される時代ではなく、物件自体の魅力などが重要になっているようです。アパートa1150_001310は、1Kから1DKタイプで、6万2082円と前回調査に比べ、0.04%下落。2DKタイプで8万5027円と同0.19%下落しましたが、ほぼ横ばいと言っていい数字でした。

相続税の実質増税を控えていることもあり、新築物件の供給は全般的に途切れていません。物件余りが生じ、築年数が経つほど成約は厳しいのが現状です。その中で「リノベーション物件」に活路を見出す事業が増えています。家主の理解も進んでいるようです。「人気エリアだが、平成初期に建てられた物件は賃料が二桁を切り始めた。昭和に建てられたものだと単身者向けで4万円台。それでも決まらない」。鎌倉の事業者が、市況の厳しさを口にしています。こうした状況に対して、一部の物件では「リノベーションを行い、単価の下落を防いでいる」といいます。西葛西の事業者も「先日、300万円をかけてリノベーションした。賃料を1万円引き上げたが、入居が決まった」と喜ぶ。リノベーションといっても中身は様々。どのような内装にニーズがあるのでしょうか。高輪台の事業者は、「最近の借主は『目』が肥えている。昔ながらの仕様や間取りは敬遠されてしまう」として、デザイン性を重視。同時に「収納を確保するなど、生活のしやすさに配慮」することが重要だと説いています。部屋そのものの大きさを変えることはできないが、例えば「洗濯機の上」(同事業者)など、空いたスペースを有効活用する手立てがあるといいます。「外観が古いと第一印象はよくないが、内装がきれいならその分『ギャップ』が大きく好感度が上がるようだ。また、1度リノベーションすれば10~15年は値崩れしない(同事業者)。一方、「借主がまず目を向けるのは築年数」(西葛西)という意見もあり、リノベーションの「効果」に懐疑的な事業者も少なくありません。実際の成功事例がなければ、費用を負担する家主への提案に説得力をもたせることも難しい。事例を増やすことはもちろん、それらが事業者間で共有されることがリノベーション賃貸の浸透につながります。

 

地域業者の声 「底ばい推移」続くか 都心では一部上昇へ

「下がっている」「まだ下がりそうだ」――。地域業者に市況感をヒアリングすると、賃料水準の下落基調を実感する声が大半を占めました。「これ以上下がると、(借り入れがある場合は)家主も支払いが厳しい」(鎌倉)といった悲観的な声の一方で、希望的観測も含めて「現在が底値」であるとの見方も聞かれました。初期費用も減額傾向です。特に礼金について、『なし』の増加した地域が増加。中には「新築でも取りづらくなっている」(西葛西)、「今年に入ってから一気に広がった。今はほとんどの物件でゼロ」(行徳)といった声もありました。また、募集時は設定していても、「(賃借希望者から)交渉が入ると家主が諦めて応じる」(早稲田)ケースもあるようです。更新料については大半の地域で変動がなかったですが、「相変わらず更新のタイミングで退去する人は多い。そのため、こちらから家主に更新料ゼロを提案している状況」(船堀)といった話も聞かれました。一方で都心部の一部は、賃料の反転上昇する機運が高まりつつあります。「これから上がりそう」(白金高輪)、「ここ最近減っていた、単身者向け物件で予算が二桁の『高額帯』がまた増え始めた」(早稲田)。好景気の目安になる法人契約も、東西線沿線をはじめとする複数の地域で増加傾向にある模様です。また、賃料水準の上昇は実感できなくても、この春の繁忙期は「来店が多かった」(志村坂上)、「(管理物件の)空室はすべてうまった」(浦安)といった声も上がっています。ただ賃料の上昇については、「実態とのかい離」に対する懸念も聞かれました。白金台の事業者は「今年にはいってから、築浅の分譲賃貸マンションが上昇傾向にある」とした上で、「必ずしも成約に至っているわけではない」と指摘。「下げ止まっているのが実情」と述べています。白山の事業者は、「高めの賃料設定が目立つが、借主はついてきていない。特に新築は『間違った』値付けが多い」と手厳しい意見も。不動産業界の中でも、景況回復の反映が一歩遅いとされる賃貸業界。大手以外の大半の企業に関しては、給与所得が上がっていない実態もあります。20年の東京五輪開催に向けて、一部の地域では建設労働者向けの社宅需要の増大も期待できそうですが、当面は底ばいでの推移が続きそうです。