9~11月にかけて活況となる秋の賃貸商戦。残りも1カ月となりました。序盤は「昨年よりもやや下回る」といった意見が目立つ中、DINKS層の動きが活発といった特徴が出ています。賃料水準の下げ止まり傾向も見られ、ボトムの今を乗り切るべく各社奮闘している様子がうかがえます。また、市場の「二極化」は更に進む傾向にあるようです。アットホームの調査によりますと、秋商戦序盤の9月の首都圏における取引件数は1万8907件で、14年9月の1万9499件を3.0%下回りました。13年9月は1万9277件、その前年の12年9月は1万9639件となっており、今年の1万9000件台割れは、9月としては近年にない低水準です。アットホーム業務推進部シニアリサーチャーの岩田紀子氏は、「DINKS層の動きはそれなりにあるが、単身者の動きが鈍い。取引が活性化するには所得環境の改善が必要」と指摘しています。
実際に不動産業者が感触として得ている9月の取引状況は、「昨年の8~9割」という意見が目立った。「ファミリーやDINKS層の取引は順調だが、単身者に動きが見られない。また、昨年まで依頼を受けていた法人からの契約も今年はなかった」(京王線明大前駅・地元業者)、「来店も問い合わせも低調。賃料水準はファミリータイプで5%ほど下げた」(東武伊勢崎線草加駅・地元業者)、「ファミリー層の取引は増えたが、単身者についてはよほど余裕がある人でないと動かない傾向にある」(京王線仙川駅・地元業者)など、苦戦傾向にある声が聞かれます。もちろん、「今秋の客足は多かった」(東武東上線和光市駅・地元業者)、「20代の社会人の引っ越しが多かった」(丸ノ内線中野坂上駅・大手業者)など、比較的良好な市況だと語る事業者もいますが、全体としては昨年と比べると低調であるとの見方が強いようです。
アットホームの調査では、主にDINKS層が想定される30~50m2のマンションタイプの取引について、東京23区エリアはこの9月で8カ月連続前年を上回る結果となりました。「家賃はそれなりに高いが、余裕があるからこそ動けるのだろう」(アットホーム・岩田氏)。不動産業者の間でも、「若い夫婦が来店する場合、ほとんどが共働き。専業主婦のケースはまずない」(JR総武線本八幡駅・地元業者)、「『ここに住みたい』と絞って(人気エリアに)来店するDINKSが多くなった」(小田急線成城学園前駅・大手業者)といった声が聞かれています。
低い水準ながら下げ止まり感が出てきた賃料動向ですが、その状況はどうでしょうか。「上がっているとは思わないが、一定水準以下にはなっていない」(京王線明大前駅・地元業者)、「相場は1~2年前と比べるとやや上昇」(東急田園都市線溝の口駅・地元業者)、「相場は横ばい。築年数が経過してもあまり下がらなくなった」(東武東上線和光市駅・地元業者)。総じて下げ止まりか横ばい、中には上昇しているといった意見もありました。また、「物件による違いが以前にも増して強まっている」(小田急線経堂駅前・地元業者)といった見方も強いようです。