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消費税率引き上げまで1年、住宅・不動産業界の現場

2017年4月の消費税率引き上げまで1年を切りました。ただ、期待していたほどの経済環境の回復が見られないことから、増税時期を見直す動きも見られます。前回の8%への増税時には、経過措置などによる駆け込み需要、更にその反動も大きなものとなって表れました。今回の増税は、住宅・不動産業界にどのような影響をもたらすのか。専門家らに話を聞きました。

1前回増税時でも表れた通り、業界の中でも増税の影響を最も受けるのがハウスメーカーです。当初予定通りだと増税まで1年を切ったこの時期、現状はどのようになっているのか。阿部俊則・積水ハウス社長は3月の決算説明会の席上、次のように語っています。「戸建て受注は、昨年12月から前年比プラスに転じ、2月は14%増と回復した。これはマイナス金利の影響によるところが大きく、消費増税の駆け込みは今のところ見られない」。顧客との商談では、経過措置期限の「9月末」の周知に努めているが、関心が高いのは金利動向のようです。旭化成ホームズも年明け以降、展示場への来場者数がプラスで推移。しかし、前回増税時には来場増が「2~3割」だったのに対し、今回の伸び率は一ケタ台と低調のようです。今回の来場者数の増加については、「低水準にある住宅ローン金利の影響」と見ています。更に、前回の駆け込みにより既に一定規模の需要が動いたと判断しているようで、「今回の駆け込みの〝山〟は低く、増税後の〝谷〟は深いことを覚悟せざるを得ない」としています。

一方、マンション業界の販売現場からは「今の段階では駆け込みはほとんど見られない」といった声が聞かれます。マンションコンサルティングのトータルブレイン・久光龍彦社長は、「ただでさえ売値が高い中、増税されることで更に手が出なくなる」と危惧を示しました。ここ数カ月、マンション市況の悪化が指摘されていますが、特に潮目が変わったのは、昨年夏以降です。「アベノミクス政策によって、昨年春までは給料の上昇期待感が高かった。低水準の住宅ローン金利の後押しもあり、販売は好調だった。しかし夏以降は、景気回復期待感が萎んでしまい購入マインドが急速に冷え込んだ」と分析しています。このような状況の中、増税による負担増は市況悪化を更に加速させる要因になることは間違いないようです。マクロ経済が専門の富士通総研・米山秀隆上席主任研究員は、「増税は延期すべきだと思う」と語っています。「消費の力が弱く、賃金も上がっていない。企業業績は好調なので、ある程度の税収は確保できている。1年後に増税すべきだとは思わない」。更に、駆け込み需要は前回ほどのボリュームはなく、増税後の反動減は前回以上のものになると予測し、「住宅購入を軽減税率の対象に加えるかどうか、今後じっくりと真剣に議論すべき」としました。