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増税延期、業界にプラス要素多いか

1消費税率10%への引き上げが、19年10月に延期される見通しです。経済が思うように回復せず、先行きについても不透明な部分が多いことが要因と見られます。住宅・不動産業界は、10%への増税時には軽減税率などの適用で住宅取得者の負担を軽くすることなどを要望してきました。増税の延期が業界にどのような影響を与えるのか。専門家らに話を聞きました。

富士通総研上席主任研究員の米山秀隆氏は、「10%への増税については、決して急ぐ必要はないと思っていた。今回の延期により、増税時期はオリンピック景気による経済環境の好転が期待できる時期となる。景気全体に大きな影響を与えることなく、増税を実施できるのではないか」と語っています。また、みずほ証券経済調査部上席主任研究員の石澤卓志氏は、「増税延期により駆け込み需要がなくなるため、16年度の民間住宅投資は当然ながら落ち込むだろう。ただ、『平準化』は業界にとってはプラス要素。安定した住宅事業を展開できる」としています。経済の専門家は、今回の増税延期を「前向き」に捉える見方をしていますが、住宅・不動産業界はどうでしょうか。全国宅地建物取引業協会連合会会長の伊藤博氏は、「景気動向や業界の現状、先行きの不透明感を考えると、今回の再延期は歓迎すべき」と語り、全日本不動産協会理事長の原嶋和利氏も、「住宅という高額な商品の税率が2%上がるのは大変な影響がある。先に延びたことについては業界にとって良い方向に働くはずだ」と見ています。

国土交通省は消費税率の引き上げへの対応として、住宅取得者の負担軽減策を二つ措置しています。それが、「住宅ローン減税」と「すまい給付金」です。「住宅ローン減税」は自宅の新築や購入、リフォームに際して10年以上の借入期間でローンを組むケースが対象で、年末のローン残高の1%を所得税から10年間控除する仕組みです。控除対象の借入限度額は4000万円(長期優良住宅や低炭素住宅は5000万円)、所得税からの控除限度額は400万円(同500万円)、住民税からの控除限度額は年間13万6500円となります。消費税率が8%に引き上げられて以降、所得税額からの控除限度額を従来の200万円から大幅に拡充。減税規模は過去最大となりました。一方、所得税の納税額が一定額に達していない場合などはローン減税の恩恵を受けにくく、増税の負担増のほうが上回ってしまいます。こうした所得層に対して国交省が用意しているのが、「すまい給付金」です。収入額の目安に応じて給付額が設定されており、消費税率8%の現在は最大30万円。税率10%時は更に、住宅取得者の対象収入を拡大した上で、給付額が拡充される予定です。8%の現在は収入額510万円以下が対象ですが、引き上げ後は同675万円超同775万円以下も対象となり、「一般的なサラリーマン層もかなり含まれることになる」(国交省)。最大給付額は、収入450万円以下の場合で50万円です。

現状では「住宅ローン減税」も「すまい給付金」も19年6月が期限と定められているため、増税延長を受けて先延ばしされる見込みです。消費税率引き上げの根拠は、12年に成立した消費税法の一部改正などの法律を含む税制抜本改革関係法律。財務省が所管する同法の改正がこれから検討され、それに伴い両制度の新しい期限も示されるとみられています。