国税庁は7月1日、相続税や贈与税の税額算定時の基準となる路線価(16年分)を公表しました。全国平均は前年比プラス0.2%で、8年ぶりに上昇。上昇した都道府県の数は、前年比プラス4の14で、北海道、広島県、福岡県、熊本県がマイナスまたは横ばいからプラスに転じました。前年にプラスだった都府県も、おおむね上昇幅が拡大しています。
都道府県県庁所在都市で最高路線価が上昇したのは、前年比プラス4の25都市。このうち上昇率が5%以上だった都市が15に上り、中でも札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡で10%以上を記録しました。5%未満だったのは福島、千葉、甲府、富山、岐阜、静岡、大津、奈良、松山、熊本。横ばいは17都市で盛岡、山形、宇都宮、前橋、長野、福井、津、和歌山、松江、山口、徳島、高松、高知、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島。下落したのは青森、秋田、水戸、新潟、鳥取の5都市のみでした。前年は水戸の下落率が5%以上でしたが、今回は5都市すべて5%を下回っています。なお国税庁によりますと、下落したのが5都市のみだったのは92年以来。路線価が上昇局面にあった08年も、下落した都市は12に上っていました。
路線価が最も高かったのは、86年以降31年連続となる「東京都中央区銀座5丁目銀座中央通り」、通称「鳩居堂」前。1m2当たり3200万円(前年比18.7%上昇)でした。2~4位の都市も前年と変わらず、順に大阪市北区角田町御堂筋(同1016万円、同22.1%上昇)、中村区名駅1丁目名駅通り(同840万円、同14.1%上昇)、西区南幸1丁目横浜駅西口バスターミナル前通り(同781万円、同9.5%上昇)です。
今回の「路線価」について、不動産業界の関係者は以下のようなコメントをしています。
■成長戦略の推進を
木村惠司・不動産協会理事長/標準宅地の評価基準額の全国平均が上昇に転じ、我が国経済が緩やかに回復する中、三大都市圏を中心とした地価の回復傾向が持続している。英国のEU離脱が決まり世界経済の先行きにも不透明感が漂う。地価回復の動きをより確実なものとし、デフレ脱却をさらに進め、持続的な経済成長を実現するためには、国内投資を促進し、企業の生産性を向上させる成長戦略の強力な推進が不可欠だ。
■地価、安定的に推移
伊藤博・全国宅地建物取引業協会連合会会長 16年の路線価が、地価公示に続く良好な結果となったことは地価の安定的推移を示すものと評価する。本会としては足元の堅調な不動産流通市場を継続的なものにすべく、インスペクション・瑕疵保険制度の普及啓発や創設された税制措置などによる空き家などの利活用を着実に実施することで、既存住宅流通市場活性化に鋭意取り組んでいく。
■マンション動向注視
菰田正信・三井不動産社長 昨年に続き三大都市圏を中心として上昇基調を維持し、また全国の標準宅地平均値は、わずかながら上昇に転じている。首都圏のマンション市況は、都心・湾岸物件を中心に好調に推移しているが、郊外部は価格上昇もあって物件によっては販売に時間を要するものも出てきており、今後の動向を注視している。オフィスビルについては、増床や拡張移転などの動きが引き続き活発で、東京都心で募集賃料の上昇が継続。地方都市でもテナント需要が拡大し、空室率の改善が続いている。
■オフィス賃料上昇傾向
杉山博孝・三菱地所社長 地価の回復傾向が持続している。当社のオフィスビル事業でも、統合・集約、BCP対応、立地改善など事務所の拡張・移転需要の顕在化で昨年に引き続き、空室率が低下し賃料改善が見られる。3月末時点の東京・丸の内の事務所空室率は1.37%と低水準で、賃料も上昇傾向が継続している。当社グループが運営する商業施設の売り上げは引き続き好調であるほか、ホテルも3月末時点で全施設平均が前年比約10%、客室単価が上昇するなど好環境が継続している。