日本と韓国を結ぶ総合不動産ソリューション企業
株式会社ワイ・エム・コンサルティング
TEL:03-3348-2241
9:00~17:00(月~金)

不動産取引の現場、認知症への対応進む

超高齢社会の今、不動産取引の相手が認知症などで判断能力が十分でないと懸念されるケースが珍しくありません。厚生労働省によりますと、2025年には認知症患者数が700万人を超えると予想されています。これは高齢者(65歳以上)の5人に1人が認知症になる計算です。そうした時代を前に、業界団体では、スムーズに取引ができるように資格制度や書式類を揃え始めています。これまで敬遠しがちだった案件ですが、苦手意識を払拭すれば、ビジネスチャンスに変えることもできそうです。

全国住宅産業協会では昨年度、東京大学と連携し、「不動産後見取引士」資格制度をスタートさせました。判断能力が不十分な人が不動産の売買や賃貸、管理などの契約行為や手続きを行うのは難しく、そのまま契約が結ばれると、後から契約解除などの混乱が起き、トラブルに発展することも懸念されます。そのため、円滑な不動産取引のためには、判断能力が不十分な人や後見人に対して適切なサポートやアドバイスを行うことができる人材の育成が必要と考えました。それにより、所有者が認知症で塩漬けになっていた不動産が市場に出てくる可能性もあります。

また、賃貸管理業務でも対応が進んでいます。日本賃貸住宅管理協会は昨年5月、「オーナーの認知症に備えた管理業務委任状書式」を作成しました。管理業者は、賃貸借契約の締結や退去後の原状回復工事、賃料などの契約条件変更などについて物件オーナーに意思確認をするのが日常業務です。ところがオーナーが認知症になってしまうと、そういった業務が進まず、入居者にも迷惑がかかってしまいます。そこで、前もってオーナーが代理人(息子や娘など)を指定しておく、管理に特化した「委任状」書式を用意しました。氏名のほか、委任事項と物件名を記入するシンプルな書式で、これにより、仮にオーナーの判断能力が低下した場合でも、管理業者は代理人との間で業務に必要な意思確認が可能となります。書式には管理業者の商号や登録番号を明記する欄も設けています。物件オーナーが高齢化して代替わりすると、管理業者も他社に変わってしまう可能性がありますが、この委任状作成は、次世代オーナーとのつながりを持つ貴重な機会にもなります。