国土交通省は6月19日、2020年第1四半期版(4月1日時点)の「地価LOOKレポート」をまとめ、公表しました。全体としては「緩やかな上昇」との見解を据え置いたものの、新型コロナウイルス感染症による影響により、23四半期ぶりに「下落」の地区が見られたことなど、地価動向に明確な変化が表れています。同レポートは、主要都市の高度利用地として全国100地区を対象に、四半期ごとに実施している地価動向調査で、土地取引の活発な地区に絞って調査していることなどから、地価の先行的な動向を明らかにするものと位置付けられています。
今回のレポートでは、2月頃から国内でも拡大していった新型コロナウイルス感染症による土地取引への影響が顕在化。2014年第2四半期以来、23四半期ぶりの「下落」が4地区で見られました。また「上昇」区分の地区数は前四半期の97地区から73地区に減少し、「横ばい」が3地区から23地区に増加。広い範囲で地価の上昇傾向の鈍化がうかがえました。
「下落」した地区は「岐阜駅北口」「(高松)丸亀町周辺」(いずれも前四半期は0~3%の「緩やかな上昇」)と、「(横浜)元町」「(福岡)大濠」(同「横ばい」)。4地区とも今回の下落幅は「0%超3%未満」でした。またこのほか、「下落」とはならなかったものの、地価動向に大きな影響が見られた地区もあります。前四半期で6%以上の「高い上昇」を示していた「(沖縄)県庁前」と、3~6%の「比較的高い上昇」だった「(札幌)駅前通」が、いずれも「横ばい」に転じました。9段階ある変動率区分で見ると、それぞれ3段階と2段階のダウンとなっています。
同省地価調査課によりますと、こうした地価動向の変化は同感染症の拡大が主因で、多くの地区で需要側が様子見に転じ、取引の停滞が見られました。そのため、傾向として、変動率区分がダウンした地区は、住宅系よりも商業系のほうが多く、また大都市圏よりも地方圏のほうがやや多くなっています。特に、前述の沖縄県庁前をはじめ、近年のインバウンド観光客の増加により土地需要においてホテルや商業施設などの比重が高かったエリアでは影響が大きくなりました。他方、オフィス市場にはそれほど影響が見られなかった様子です。同課の西畑知明地価公示室長は、「インバウンド人気の高いエリアの中でも、大阪や京都では、地価上昇の勢いは落ちたものの下落には転じていない。オフィスやマンションなど土地のニーズが多様な地域であり、需要が底堅いため相対的に影響が小さいと見られる」と分析しています。併せて、「4月から5月にかけては緊急事態宣言が発令され、その後解除されるなど、社会情勢の変化が大きかった。地価がどのように推移するかは不透明な状況であり、引き続き注視していきたい」と述べました。