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不動産クラウドファンディングの2022年度出資額は2.6倍に。国交省が「実務手引書」を公表。

国土交通省は、不動産証券化市場の中でも小口からの投資ができ、急成長を遂げている不動産クラウドファンディングを後押しするため、9月29日に「不動産クラウドファンディングに係る実務手引書」を公表しました。証券化事業ノウハウに乏しい事業者でも適切に業務体制を構築できるよう、実務上のフェーズに沿って解説。さらに事業で起こり得るリスクの抑制やトラブルの回避策を示し、投資家保護を実践できるよう促すことで、投資家が安心して投資できる環境を作り出すのが狙いです。

不動産特定共同事業法(不特法)に基づく不動産クラウドファンディング(不動産クラファン)は、2017年の不特法の一部改正で個人投資家がインターネットを通じて少額から不動産投資を行えるようになったことで可能になりました。その後、不動産クラファンは急拡大。2022年度は件数で前年度比約1.85倍の419件、出資額で同約2.61倍の約604億3000万円と増加し、老朽化した施設の改修・再生、地方での不動産投資における資金調達などにも広く利用されています。特に地方(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、愛知県、大阪府以外の道府県)における2022年度の不動産特定共同事業の実績は129件。そのうちクラファンに対応した件数は101件にも及んでいます。

不動産クラファンは対面せずに全国的に投資家を募ることができるため、地方にもメリットがあります。一方で、不動産証券化事業や電子商取引業務を行うための専門的な知識やノウハウを持つ業種・人材が都市部に集中しているため、都市部と地方との格差が生じてしまうこともあるため、「不動産クラウドファンディングに係る実務手引書」は、この格差を埋め、不動産クラファンを含めた不特法の推進を図る狙いがあります。

具体的には「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」(2019年適用)に示されている業務管理体制を実現するための対応を、具体例等を挙げながら示しており、「事業導入」「マーケティング」「管理・運営」の3つのフェーズに分け、それぞれで行わなければならないこと、想定されるリスク・トラブルと、それを回避するための必要な対策・ポイントを示しています。

例えば、外部委託先にシステム構築・保守管理を任せる場合、トラブルの最終的な責任は委託元が背負わなければならないため、システムに関する管理責任を担う担当者・担当部門を設置しなければならないこと、委託業務が適切に行われているか定期的にモニタリングする体制を整備すること、トラブル発生時の委託先との役割分担・責任分担を事前に協議し明確化していくことなどが詳細に記されています。また投資家募集、ファンド管理・運営を行う際に気をつけなければならない個人情報の取り扱いや、リスク要因を投資家側に十分に説明し、理解してもらえているかを確認することの重要性を解説しています。

国交省では「クラファンは小口からの投資ができる一方で、信頼性に疑念を持つ声も挙がっている。リスク・トラブル回避策を講じて、投資家が安心して投資できる環境を整備することで、新たな投資を呼び込み、不動産証券化市場の拡大に努めていきたい」と述べています。