ライフルはこのほど、「ライフルホームズマーケットレポート」をまとめ、2024年春の賃貸繁忙期の賃料動向を公表しました。それによりますと、新たな入居者を募集する際の掲載平均賃料が上昇傾向にある一方、反響賃料の上昇率は低水準にとどまり、ユーザーニーズが追い付いていない状況が分かりました。(集計データは2024年1~3月、ライフルホームズで登録・公開された居住用物件が対象)
【ファミリー向け】
3月の東京23区の掲載平均賃料は21万1618円(前月比3.1%上昇、前年同月比17.8%上昇)と上昇傾向が続き、1年間で3.2万円上昇しました。他方、反響平均賃料は17万246円(同0.4%下落、同2.6%上昇)にとどまっています。また、首都圏の掲載平均賃料は13万348円(同2.6%上昇、同15.2%上昇)、反響平均賃料は11万7422円(同1.2%下落、同2.2%上昇)でした。
ライフルホームズプレス編集部の渋谷雄大氏は、売買物件の価格高止まりや日銀の金融政策修正の報道を受け、買い控えの動きが一定程度生じ、賃貸需要が増加し、賃料上昇圧力の一因となっていると見ています。加えて、23区の平均掲載築年数が19年に若返った点を指摘。国交省が公表する住宅着工統計で2022~2023年の東京都の着工数が増加している点や床面積の拡大傾向に触れ、「ファミリー向け物件の着工が増加しており、上昇要因の一つになっている」と分析しています。
【シングル向け】
3月の東京23区の掲載平均賃料は10万1232円(前月比3.9%上昇、前年同月比8.0%上昇)、反響平均賃料は9万220円(同1.6%上昇、同2.5%上昇)で、初めて掲載平均賃料が10万円を超えました。また、首都圏の掲載平均賃料は7万7566円(同2.2%上昇、同4.1%上昇)、反響平均賃料は7万6414円(同横ばい、同3.6%上昇)となっています。
上昇要因について渋谷氏は、昨今の物価高や周辺相場への対応と、23区のシングル層の転入超過による需要増加などの影響だと指摘。入居率が低下していたコロナ禍と比べて、強気の賃料設定が可能となっていると分析しています。
東京23区では、ファミリー向け、シングル向けともに、掲載賃料に対する反響賃料の上昇率(前年比)は横ばい、あるいはわずかなため、渋谷氏は「いずれもユーザーのニーズは掲載賃料の上昇に追い付いていない」と指摘しています。賃貸市況については「全体としては活況」と捉えた上で、東京23区内の複数の賃貸管理会社によりますと「退去は少なかった」という声が多かった点も指摘しました。同時に「更新時の賃料の値上げ幅よりも、再募集時の値上げ幅が大きい」という声も聞かれたとし、「ユーザーにとっては、同条件で住み替えを検討したときには現物件よりも賃料水準の高い物件ばかりが出てくるという人も多かったのではないか」と推測しています。したがって、今回の春商戦を支えたのはコロナ禍で控えられていた転勤など必要に迫られた転居需要が活性化したもので、「特に23区で更新を機とした住み替えなどは少なかったのではないか」との見方を示しました。今後の見通しについては、ユーザーニーズからかけ離れて掲載賃料が上がり続けると、やむを得ない事情がない場合の住み替えを控える動きが増加し、入居期間が長期化する可能性があると指摘。賃金上昇など、掲載賃料に追い付く状況が生まれるかどうかが焦点となりそうです。