国土交通省が発表した2025年の地価公示は、投資マネーの流入を色濃く映し出す結果となりました。特に東京23区に下落地点はなく、商業地の上昇率は11.8%となり、4.8ポイント拡大しています。19年連続で全国最高地価の「山野楽器銀座本店」(6050万円)を筆頭に訪日客需要の強いエリアで地価が上昇しました。
今回、公示された地価を見ますと、商業地の上昇率トップ10には渋谷区と台東区から2地点ずつランクインしています。商業地では外国人観光客がけん引役となり、台東区は浅草の訪日客の増加が反映されました。円安の長期化が後押しし、日本政府観光局(JINTO)が3月19日に発表した2月の訪日外国人数は325万8100人と、2月としての過去最高を更新しました。そうした訪日客がお金を落としていく地域の地価が上がっています。
東京23区別に商業地の上昇率を見ますと、上げ幅が最も大きいのが中野区で16.3%上昇しました。次いで杉並区(15.1%)、台東区(14.8%)、新宿区(13.7%)、千代田区(13.3%)、渋谷区(13.3%)となっています。マンション利用が可能な地域や再開発事業などで利便性と賑わいの向上が見込まれています。渋谷駅周辺の大規模開発を反映し、「渋谷サクラステージ」に近い「渋谷区桜丘町14-6」が32.7%上昇し、全国上昇率5位、東京1位となりました。
中野区と新宿区では、駅前再開発事業の期待が地価を押し上げています。京王百貨店などの「新宿駅西南口地区開発計画」では南街区が2028年度に竣工予定で、解体中の小田急百貨店などの建物は「新宿駅西口地区開発計画」として2029年度に竣工。明治安田生命新宿ビルなどの跡地で進む「西新宿一丁目地区プロジェクト」は2026年に竣工する予定です。
こうした再開発事業の動きに加えて、一般事業者が資本効率を重視した経営を進める上で遊休不動産を手放す事業者が増えていることも地価を押し上げています。「一般事業法人の購入商談件数は増加傾向で、その単価は大きく上昇している。売却の商談件数は横ばいであるものの、単価は上昇基調にある」(仲介大手)との声や、別の仲介大手からは「昨年1年間の売買件数について50億円以上が倍増した」などの声が聞かれました。
東京の地価動向を見ますと、「訪日客」「再開発」「資本効率」の3つのワードに分解でき、それぞれが相まって土地の収益力を上げており、特に商業地で高水準の地価は当面続きそうです。