住宅・不動産業界は息の長い好況が続いています。収まらない物価高に懸念が及ぶものの、2年続けての高水準の賃上げなど雇用と所得に改善の兆しが見られます。マンション価格は、平成バブル経済期を超えてもなお上昇を続け、東京23区では億ションが珍しくなく、それでも買い手がすぐに現れています。東京都心のオフィス空室率も2%台まで低下し、需給逼迫が賃料アップを演出しています。訪日客の増加は、ホテルや商業店舗の収益につながっており、大手不動産を中心に今期も過去最高益が見込まれている下半期を展望します。
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントは先月、日本に特化した円建て不動産ファンドを投入すると発表しました。かつて全日空系列のホテル群を買収して注目を浴びたメズレフの後継的な存在として知られるノース・ヘブンが、当初目標の750億円を上回る1310億円を調達し、東京と大阪等の主要都市の不動産資産に注力して投資する予定です。国内外からの人口移動に支えられている住宅とコロナ明け後に出社比率の高い就業需要に支えられているオフィス、通販など好調なeコマース市場を見据えて物流施設に資金を投じ、日本独自の構造変化の恩恵を受ける不動産を追求していくということです。不動産協会の菰田正信会長(三井不動産会長)は、「こうした外資のファンドや機関投資家が対日投資をするということは日本の不動産の価値を認めてもらっていることで歓迎したい」と話しています。
モルガン・スタンレーMUFG証券エグゼクティブディレクターの姉川俊幸氏は、「投資家の注目セクターはオフィスとホテル。オフィスは低い空室率と賃料が上がっているため強気で、客室単価が上がっているホテルにもまだアップサイドがあるとの見方が多い。ディフェンシブな賃貸住宅を見ると、都市オンリーだがマンション価格が高騰しているので利回りを確保するために賃料を上げざるを得ない。新規供給が難しい都心は有望な投資先だ。物流施設は、基本的に安定しているが若干劣後し、商業施設は固定賃料や歩合賃料などタイプにもよるがオフィスに比べて賃料を上げづらいセクターであり、インフレ局面では相対的に劣後する」と分析しています。
商業用不動産の取引は依然として活発で100億円以上の売買取引が相次いでいます。 JLLによれば、2025年上半期の不動産取引額は暦年半期ベースで2007年下期以来の3兆円超えとなり世界主要都市で東京は1位でした。「赤坂ガーデンシティ」や「東京ガーデンテラス紀尾井町」、「東急プラザ銀座」、「ヒルトン福岡シーホーク」などオフィス・商業・ホテルなどの大型取引が続き、年内には「恵比寿ガーデンプレイス」の売却先が固まる見通しです。同社は2025年通年の不動産投資額は、昨年の5.5兆円を超えて6兆円に迫ると予想しています。