国土交通省は、検査済証のない建築物が再生・流通しやすい環境の整備に力を入れます。6月頃までに、14年に策定した「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を改訂する方針です。
検査済証は、完了検査を受けた後に特定行政庁や指定確認検査機関から発行される、建築物が建築基準法に適合していることを証明する証書です。取得が義務づけられているが、以前はその認識が低く、99年以前の取得率が半数以下にとどまっていました。当時、検査済証を取得しなかった既存の建築物は、後にリノベーションなどの利活用がしづらくなることが多くなります。既存の建築物に対して一定規模の増改築や用途変更を行う場合は確認申請の手続きをしますが、このとき新築時の検査済証を提出する必要があるためです。そこで国交省は、法適合状況調査のガイドラインを策定。円滑に確認申請ができるよう、指定確認検査機関が建築時の法に適合しているかどうかを確かめる調査の手順を示しました。
このガイドラインについて、15年6月に策定された内閣府の規制改革実施計画には、更なる運用改善に向けた要請が盛り込まれました。これを受けて国交省は、確認申請を受け付ける立場の全特定行政庁に対してアンケート調査を実施(回答率94.4%)。その結果、ガイドラインに基づく適合状況調査を「あまり活用していない」との回答が65.5%に上りました。理由は、「事業者からの相談実績自体がない」「ガイドラインに具体的な調査方法が明記されていない」など。これを踏まえて、調査方法・範囲の例示や、指定確認検査機関の役割の明確化などをガイドラインに盛り込む方針です。構造や防火といった規定については、チェックリストの添付を想定しています。また国交省は現在、事業者や建築士を対象にヒアリング調査も行っており、そこで得られた改善点も反映させる考えです。改訂後はパンフレットの作成・配布などを通じて周知を図っていきます。