金融分野のフィンテックに対抗して、不動産とITの融合である「不動産テック」(リアルエステートテクノロジー、リーテックとも)が注目されています。既にビッグテータと人工知能を使った価格査定など新しい不動産ビジネスが生まれ、各分野で次世代型の新商品、新サービスの開発、試行も始まっています。技術革新によって不動産関連産業がどう変わっていくのでしょうか。
6月に開かれた日米不動産協力機構(JARECO、代表理事・中川雅之日本大学教授)主催による「テクノロジーは近未来の不動産業に何をもたらすか?」をテーマにした記念シンポジウムに大勢の業界関係者が参加し、関心の高さをうかがわせました。業界最先端を行く事例紹介では、不動産業のテクノロジー化をけん引する4人の実務家が登場。不動産査定エンジンを開発し、運営に乗り出したリブセンスの芳賀一生氏、スマートロックロボット「AKERUN」を主軸にIoT事業を拡大しているフォトシンスの河瀬航大代表、世界で電子サインを手掛ける企業グループであるドキュサイン・ジャパンの小枝逸人代表、不動産情報サービスのネクストの伊東祐二氏により国内の不動産市場で進むテクノロジー化の最新事例を披露しました。
中川代表はこれに先立ち、「IT技術が日本の不動産市場にどのような影響を及ぼしていくのかを探るシンポジウムとなる。著書『国家はなぜ衰退するのか』では、テクノロジー化やグローバル化を受け入れられなかったことが国家衰退の要因だと指摘されている。既存の体制や、やり方の変更を受け入れられない国家やグループが長くは続かないことを示したものだ。不動産ビジネスが変化の先頭に立てるように引き続き研究に努めていく」と挨拶しました。JARECOでは今期、リアルエステートテック研究会に新たに設けた不動産情報システム研究会とブロックチェーン研究会を通じて、世界的な先進事例や、システム・サービス間での連携、共通IDなどの研究に注力していくそうです。
日本不動産カウンセラー協会が6月に開いた「進化する不動産ITと未来」をテーマにした講演会では、米国の不動産テック活用事例として価格推定サービスを紹介しました。取引事例を基に住宅街の1軒1軒に推定価格を表記し、「あなたの家は今いくら。売り時です」と知らせ、反応に合わせたサービスを提供するもの。広告会社、不動産会社などが価格推定を軸にした各種サービス事業を展開しています。取引価格が分かり、データ集積がある米国ならではのサービスで、IT化によって顧客獲得は情報提供によるものから次の段階、提案・コンサル営業に進みつつあります。日本市場における「不動産テック」の動向を見据えつつ、より良いサービスを心がけてまいります。