主要不動産会社の2017年3月期第2四半期(中間)連結決算は、堅調なオフィス・商業施設賃貸事業、根強い住宅需要を核とした分譲事業などで、ほぼ当初計画通りの増収増益基調となりました。分譲事業では、前期実績との多寡、上期下期のアンバランスなどによるバラツキもありますが、通期では多くの企業が最高業績かそれに近い水準を維持する見通しです。不動産会社の主要事業はビル・商業施設賃貸事業、マンションなど住宅・ビル分譲事業、流通・管理・運営事業の3本柱に分けられますが、いずれも数年来の好調が継続した格好です。
東京などのオフィスビル市場は空室率が低下する一方で、企業業績の回復に伴うオフィススペースの拡大・移転・集約ニーズなどで賃料水準も上昇傾向にあります。東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)対応の強化も根強く、都心部再開発などで大型ビルを供給している大手不動産は、相対的に競争優位が続き、満室状態と強含み賃料が定着して収益基盤を固めています。
東京都心部では今後も再開発が活発に行われ、2018年から2020年の五輪・パラリンピック前後以降にかけてもオフィス供給の増勢が続きそうです。需給バランスが崩れるとの指摘もありますが、現在のプロジェクトは「建て替え・再開発」が多く、「純増」面積はそう多くはなく、各社とも「一時的に空室率、賃料に影響が出ても、基調としては十分吸収できる範囲」と説明しています。
これに対して減速感が漂っているのが新築分譲マンション。市場は昨年以降、価格上昇と共に月間契約率が好不調ラインの70%を割り込むことが多くなり、供給量も減少傾向にありますが、今のところ業績には直接的な影響は表れていません。販売開始から売り上げ計上に2年ほどかかる事業特性があり、今期決算は2、3年前の好調時の供給物件が売り上げの中心で、比較的堅調な業績となっています。企業によるバラツキはかなりあるものの、都心部周辺やタワーマンションなど高価格で収益性の高い物件、リートなどの投資家向け物件が寄与しています。昨年来の市況が反映されてくるのは来期以降になりそうです。
不動産仲介、マンション管理、投資家物件など資産の管理運用などは、ストック量、投資市場とスライドして拡大基調にあります。各分野の大手は総合大手不動産グループが多く、企業統治の強化などから相次いで上場廃止となったことで見えにくくなりました。だが、売買仲介事業は堅調で、今期もリーマンショック以降継続してきた拡大基調を持続しそうです。
借入金など有利子負債依存体質の業界にとって、ここ数年の超低金利は追い風であり、当面、基調に変化がなさそうなことも強気の構えを後押ししています。通期業績予想も増収増益が大半。2年ほど前から最高決算が相次いでいますが、今期も三井不動産、三菱地所、住友不動産が収益とも最高業績を更新するほか、東急不動産ホールディングス、野村不動産ホールディングスも最高水準。好調なビルだけでなく、マンション主力組でも増収増益、最高決算が目立っています。