6月の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行を前に、コンビニエンスストアを民泊ビジネスの拠点にする取り組みが進行している。
JTBとセブン・イレブン・ジャパンは全国のセブンイレブン店舗で、民泊用チェックインサービス「フロントデスク24」の提供を開始する。専用端末「セブンチェックイン機」を設置し24時間365日いつでも本人認証と鍵の受け渡しをできるようにするもので、民泊新法が施行される6月15日から新宿区内の店舗で開始する。JTBが機器を開発・運営、セブンイレブンは設置場所を提供し2018年10月までに50店舗、2020年度末までに1000店舗への拡大を目標とする。
利用者は端末に予約番号、氏名・住所入力など宿泊名簿登録を行い、パスポートと顔写真を撮影して本人認証が完了するとキーロッカーが開き部屋の鍵を受け取ることができる。チェックアウト時には同じコンビニで同機に予約番号を入力し、キーロッカーに鍵を戻す方式だ。
新法では、物件オーナーが同居しない家主不在型、つまり住宅宿泊管理業者が介在する民泊物件では、宿泊名簿の作成や対面またはICTを活用した非対面での本人確認を義務付けており、これらの業務を代行する。JTBは管理業者から端末の使用料を徴収し、セブン・イレブン・ジャパンには端末の設置手数料を支払う。チェックイン時のトラブルは24時間体制の多言語コールセンターで対応する。対応言語は日本語、英語、韓国語、中国繁体字・簡体字。
ローソンは1月からGINZA SIX店など一部店舗で民泊用の鍵保管ボックスを設置済。欧米各地で鍵の受け渡し拠点を設けるカナダのベンチャー企業「キーカフェ」の日本法人と連携し、2018年度末までに都市部の店舗を含めて約100店舗への拡大を目指す。民泊だけでなく、不動産会社が賃貸物件の鍵の貸し出しに利用したり、カーシェアリングで車のキーを渡したりするケースも想定。利用者にはキーカフェのシステムを通じ、電子メールなどで鍵を保管する場所やボックスを開けるパスワードが送られる。
沖縄ファミリーマートも昨年11月から、民泊物件の鍵を開けることができる「チェックイン専用チケット」を情報端末で発券するサービスを開始している。
昨年からコンビニのシェアリング事業参入が相次いでおり、各社が民泊利用者向けのサービス拡充に力を入れているのは、宿泊先で使用する日用品や飲食物などの購買需要が取り込めるからだ。特に訪日外国人客は多彩な商品が手頃な値段で揃う日本のコンビニに対して関心が高く、商品をSNSにあげるコンビニマニアも多い。こうした需要を取り込もうと近年、コンビニ各社は外国人客向けに免税やキャッシュレス決済などのサービスの導入を進めてきた。
セブン・イレブン・ジャパンの参入によりコンビニ各社の民泊サービスに対する更なる競争激化が想定されるが、身近なコンビニが新手の犯罪拠点とならないかも懸念される。