賃貸住宅管理におけるコミュニティデザインや空き家の適正管理など、不動産管理業が本来の業務の域を越えて、居住者同士や地域とのつながりの創出に果たす役割が期待されています。国土交通省は1月31日、「ひと」と「くらし」の未来研究会を開催。「不動産管理業の未来」をテーマに、不動産事業者・管理業者による新たな地域創造の可能性を探りました。
事務局では、まず賃貸住宅管理業登録事業者数が8754件(2022年12月末現在)、また2021年度末時点で登録を受けたマンション管理業者が1934者、委託した管理組合数が11万3476組合であることを共有しました。さらに、ハラッパ団地(埼玉県草加市)や「小商い建築」など、人とのつながりや新たな暮らし方を提案する取り組みを紹介しています。
また、神奈川県住宅供給公社は、有人管理方式を初採用し、地域に開いたコモンスペースと入居者同士の縁を楽しむ暮らしを展開する「フロール元住吉」を紹介。同公社の並木文栄氏は賃貸住宅の管理人の「もりびと」や地域交流スペースなどの特色を挙げ、「施設運営者が入居者へ気持ちよくサービス提供できるよう、建築設計段階でパートナー事業者を公募した」と事業計画の工夫を明かしました。
研究会メンバーからは、「コミュニケーションマネジメントは居住者の家賃滞納やクレームなどトータルコストの削減に寄与する面もある。いかに評価軸を構築していけるか」などの意見が出されました。並木氏は「公的ディベロッパーとして、地域の暮らしのプラットフォームをつくりたい。賃貸事業を街に開き、地域を変える種をまきたい」と意欲を示していました。 空き家管理ビジネスについては、居住目的のない「その他空き家」(2018年時349万戸)の対策の重要性を強調。業界団体によるアンケート(有効回答数3990社)では、全体の9%が現在空き家管理を受託し、6%は有償で実施。また、委託者の居住地(無償含む)は「車でおよそ3時間以上」が40%で最多である点などを報告しました。このほか、事務局からは民泊を活用した二地域居住等の取り組みや、地方部での住宅宿泊管理業の担い手不足解消に向けた規制改革措置の対応状況などが報告されました。