政府は2024年12月27日、一般会計額が115兆5415億円(前年度比2兆9698億円、2.6%増))となる25年度予算案を閣議決定しました。このうち、国土交通省関係は一般会計で5兆9528億円となり、前年度を9億円(0.02%)下回ったものの、ほぼ横ばいの予算規模となりました。前年度と同様、「国民の安全・安心の確保」「持続的な経済成長の実現」「個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」の3点を方針の柱として掲げています。具体的な施策分野としては、住宅・建築物の脱炭素化にこれまで以上に力を入れたほか、引き続き災害対策関連に大きな割合の予算を割いており、既存住宅流通促進や空き家等対策、二地域居住等の関連予算も拡充している。
住宅分野では、基本的な方針の柱の一つ「経済成長」のうち、「脱炭素社会の実現に向けたGX推進」を図る施策の一環として、新築・既存双方における省エネ化等の推進に注力。「脱炭素効果の高い住宅・建築物の普及や木材利用の促進などを通じた住宅・建築物の脱炭素対策等の強化」に941億円(前年度比5%増)を計上し、ZEHや長期優良住宅等への支援や既存ストックの省エネ改修支援の強化等を行うとしています。
近年の住宅政策において、省エネ化を中心とする脱炭素化は最も重視される分野の一つですが、2024年度補正予算における「子育てグリーン住宅支援事業」等の2255億円とも併せて、カーボンニュートラルの実現へ向けた住宅政策への注力姿勢を、今回の予算案でも改めて示しました。加えて、脱炭素化は街づくり分野でも重点項目となっており、「グリーンインフラ、街づくりGX」等の推進は149億円(同7%増)と増額しています。
住宅・不動産分野としてはこのほか、「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」279億円(同20%増)、「空き家対策、所有者不明土地対策等の促進」88億円(同10%増)で予算額を拡大。街づくりや地域活性化の分野でも、「スマートシティの社会実装の加速」29億円(同5%増)や、「二地域居住促進・多様な地域生活圏の形成」199億円(同4%増)などへの配分を増やしています。なお、「コンパクト・プラス・ネットワーク推進」についてはは797億円(同1%減)で微減となったものの、引き続き予算規模は比較的大きくなりました。
国交省関係予算案全体に占める割合自体が最も大きいのは、方針の柱のうち、「安全・安心」に関する事業です。特に「防災・減災及び国土強靭化」関連は、「『流域治水』の加速化・深化」6360億円(同2%増)や、「南海トラフ巨大地震、首都直下地震等への対策の推進」2032億円(同4%増)など、予算規模の大きな施策が並ぶ主軸分野となっています。
さらに、予算規模こそ比較的小さいものの、「密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の強化」は同144%増の185億円と大幅に増加しています。2024年1月の「令和6年能登半島地震」の教訓も踏まえ、建物や街づくりにおける災害対策を一層重視する同省の考えが読み取れます。
このほかでは、「防災情報等の高度化」「盛土の安全確保対策」「国の災害支援体制・機能の拡充・強化」といった施策も主な項目として挙げています。同省は、2024年度補正予算とも一体的な視点でこうした取り組みを進め、2025年度を最終年度とする国土強靭化の「5か年加速化対策」の推進や、今後予定する「国土強靭化実施中期計画」の検討及び策定の加速化を図っていくこととしています。