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好調なマンション市況、価格じわり上昇傾向

昨年末の政権交代以降、安倍内閣が声高に叫び続けている「経済活性化」。ここにきて株価上昇に一服感が出てきたようですが、政権交代前と比べると、依然として倍近い水準を維持しています。経済の活性化による「日本の元気」は歓迎すべきこと。ただ、そうなれば「物価の上昇」といった現象も出てきます。ここ数カ月、市場全体の上向きが指摘されている「新築マンション」の最近の価格にも上昇傾向が見て取れます。不動産経済研究所(東京都新宿区)の調査によりますと、首都圏で13年1月~5月までに供給された新築マンションの平均価格は「4712万円」となっています。12年の同期間の「4525万円」と比べて約200万円上昇。更にここ3カ月は、連続して前年同月を上回っています。この状況は、「本格的な価格上昇」を意味しているのか。同研究所では、ポイントとして「地価の上昇地点の増加」「復旧・復興による人手不足」「資材価格の上昇」の3点を挙げています。

まず、1点目の「地価上昇」については、国土交通省が四半期ごとに公表している地価動向調査「地価LOOKレポート」の最新調査(13年1月~3月=第1四半期)では、リーマンショック以降で初めて上昇ポイント数が全体の半数を超えました。「都心の住宅系地区における需要の増加が、上昇要因の1つ」(国交省)。地価が上がれば、当然のことながらマンションの販売価格は上昇基調となります。2点目の「人手不足」は、東日本大震災の復旧事業に、今後も建設工事関係者が大量に動員されるため。人手不足の中にあって、マンション建設のために人員を確保しようと思えば賃金を上げざるを得ません。これは、震災復旧が始まった時期から続いている現象で、今後の更なる本格復旧を考えれば、人手不足の改善は難しい状況と言えるでしょう。3点目は、円安による原材料価格の上昇や、輸送コストの増大などをはじめ、好調な自動車産業を背景とした鉄鋼価格の上昇など、様々な要因がからまって生じています。震災復旧に、大量の建築資材が使われることも大きく影響しているようです。資材価格の上昇については国交省の調査でも報告されており、建設工業経営研究会の「RC造マンションの建築費指数」では、10年平均を100とした場合、13年3月は106に上昇しています。

これらの3点を総括すると、マンション価格は「上昇基調にある」と考えてよさそうです。不動産経済研究所では、「価格の上昇懸念は、全般的に広がっている」と指摘。マンション販売の長谷工アーベストが、首都圏居住者(有効回答2478件)を対象に4月に実施した調査でも、「マンション価格は上がると思う」と答えた人の割合が42%に上りました。3カ月前の前回調査と比べて、15ポイントの大幅増。そのため、「住宅購入に向けた動きを早めた方がよさそうだ、と考えるエンドユーザーが増えている」(不動産経済研究所)と分析しています。マンションコンサルティングのトータルブレイン・久光龍彦社長は、販売価格上昇について「付加価値の高い高額タワーの供給増も1つの要因」と指摘。更に、ここ数カ月、多くの来場者でモデルルームがにぎわっていることから、「ディベロッパー(販売)側も、少し強気の価格設定をしているようだ」と見ています。a1180_008690

この「マンション価格上昇」と併せて、住宅購入検討者にとってもう1つ大きな問題があります。それは、「ローン金利の先高感」です。住宅金融支援機構が提供する住宅ローン「フラット35」の6月の最多金利は2.03%。5月の1.81%と比べて0.22%上昇。12年7月以降、13年2月を除いて1%台を維持していましたが、再び2%台へと突入しました。

この住宅ローン金利、利用した時期によっては販売価格以上に大きな影響となって表れます。最新の2.03%の金利で4000万円を35年ローンで組んだ場合、月々の支払額は約13万3000円。そして、たとえば4年前の09年6月の金利3.24%の場合は、月々約15万9000円の支払いになります。毎月2万6000円の差。35年のトータルで見ると、約1100万円の違いが生じます。住宅ローンの低水準は十年以上続いており、「3.24%」も低水準として位置付けられる金利。そのため、ここ1~2年については「異常な低金利」と言われており、この金利が今後上昇へと向かうことは多くの経済評論家も指摘していることです。住宅価格と住宅ローン金利の上昇。アベノミクスの〝影響〟とも言えるが、更にもう1つの「収入増」という重要な効果を出さなければ、住宅購入自体を断念する人が今後増えていくことでしょう。