国土交通省は9月6日、特定行政庁に対して、シェアハウスは建築基準法において「寄宿舎」に該当すること、また、寄宿舎に求められる間仕切り壁の耐火性を満たすことが必要であり、それらに違反する場合は是正指導を進めるよう通知しました。寄宿舎に該当した場合、通常の住宅では求められない「間仕切り壁の準耐火性確保」が必要になります。これまでのシェアハウスでは、この耐火性確保を求められるケースはほとんどなく、今回の通知で特定行政庁が今後どのような判断を下していくのか、注目が集まっています。国交省はこれまでも、「シェアハウスは『住宅』ではなく『寄宿舎』」との見解を口頭ベースでは示しており、今年6月にマスコミ報道で違法シェアハウスが問題になった際も、「寄宿舎である可能性が高い」との表現はしていました。ただ、今回のように文書で断定したのは初めて。住宅と寄宿舎で何が違うのか。特に重要なのが、「防火上主要な間仕切り壁の準耐火構造」です。建築基準法上、住宅には求められていませんが、寄宿舎では必要となります。今回の通知では、シェアハウスは寄宿舎であるため、寄宿舎としての規定を満たすこと=防火上主要な間仕切り壁の準耐火構造を満たすことが必要で、特定行政庁に対して「適切な判断を」求めています。なお、戸建て住宅をシェアハウスに転用しているケースで、この耐火構造基準を満たしている物件は、現在ほとんどないと推測され、国交省は、「基準に適合していなければ、改善してもらう」と話しており、その際の改修費用などが問題となっています。
シングルマザー向けシェアハウスなど、様々なコンセプトで良質なシェアハウスを提供しているストーンズ(川崎市高津区)の細山勝紀社長は、「物件規模にもよるが、改修には数十万円かかると思う。更に、入居者がいる中での工事だと大きな迷惑だ」とコメント。そして、「新しい居住形態のシェアハウスを現行法にあてはめるのではなく、シェアハウス独自の柔軟な規制を設けるべきではないか」と話しています。また、首都圏で約3000室のシェアハウスを運営するオークハウス(東京都渋谷区)の山中武志代表は、今回の規制強化の発端となった脱法事業者について、「本来のシェアハウス事業者ではない」と言い切りました。日本シェアハウス協会の山本久雄代表理事も、「問題の脱法ハウスは火災リスクや劣悪な居住環境などが問題なので、厳しく取り締まるべき。一方、たとえば4LDKの住宅に大人4人が静かに暮らすシェアハウスは、あくまでも住宅だ」と指摘しています。実際にシェアハウスの現場を見て、違法性の有無を判断する特定行政庁(今週のことば)は、どのような考えか。これまで2物件を違法シェアハウスと判断して改善指導した大阪市は、「指導した2物件は、窓がなく天井高が低いなど、住宅として明らかに建築基準法違反だった」と話しています。「国から『シェアハウスは寄宿舎』と示されても、実際に現場を見る立場としては、簡単に違法と指摘することはできない。違反していると思われる事例を中心に、判断していくことになるだろう」との見解です。東京都豊島区でも、「過去の審査結果なども考慮すると、判断は慎重になる。また、権利の制約といった側面もあるので、簡単に違法とすることはできない」と苦しい立場を説明しました。悪質事業者による違法シェア物件が社会問題となってから約3カ月。規制強化の方向となってきました。業界は、「新たな市場の芽を摘むことがないようにしてもらいたい」と願っています。