住宅新報社が年2回実施している「4大都市圏家賃調査」がまとまりました。それによりますと、東京圏(14年9月1日時点)のマンションの平均賃料は、ワンルームタイプが7万1854円。前回調査(14年3月1日時点)比で1.69%上昇。0.62%上昇だった前回調査時よりも、上昇幅が拡大しています。
1LDKから2DKタイプも、10万6695円で前回比0.62%上昇。2LDKから3DKタイプは13万3191円で、同0.08%上昇でした。アパートの平均賃料は、1Kから1DKタイプが6万2313円で同0.39%上昇、2DKタイプが8万5161円で同0.16%上昇。総合すると、マンションはやや上昇傾向、アパートはほぼ横ばいから小幅上昇でした。
首都圏の業者にヒアリングを実施したところ、「相場に大きな変動はなし」との見方が多く、同時に成約賃料の上限と下限の幅が広がり、二極化が進んだ印象。平均賃料が横ばいか若干の上昇を示したエリアでも、下限が引き下がっている場合は相場の上向き感を実感できていません。
実際、市況の低迷を訴える声も少なくありません。やはり築古物件の稼働率低下が深刻な模様で、「これまでと同じ条件での募集は厳しい。1万円下げなければ決まらない」(東京都文京区の業者)、「一度空くとずっと空いたまま。リノベーションをすると決まる場合もあるが、それも利便性のよくないエリアや駅遠立地の物件では成功しない」(同墨田区の業者)のが実情のようです。
賃料については、エリアによって「家主は(値下げができる)ぎりぎりのラインまできている。これ以上下げられない」(同板橋区の業者)状況もあるようです。そこで調整機能を果たすのが初期費用であり、前回に引き続き今回の調査でも、特に礼金の減額傾向が顕著でした。「礼金なし」は単身者向けの物件で多いが、「最近はファミリー物件にも広がっている」(同文京区)エリアも出始めている。ただ、業者側には「初期費用が用意できるかどうか」を後の家賃滞納リスクの〝指標〟と捉える向きもあり、その減額に対しては慎重を期したい、という本音も聞かれました。
一方で、都心や高級エリアを擁するエリアの一部では、前回同様に募集賃料の上昇傾向がみられました。「敷金と礼金を2カ月ずつで設定するなど、大手管理会社が強気の条件に戻し始めている」(同港区の業者)。この業者は、投資物件の取引が活況を呈していることが背景にある、と指摘。「今は投資家が高値づかみをしており、それに準じて賃料も高くしている。昨年は入居を優先して低めに設定していたが、退去のタイミングで1万円以上上げて募集したケースもある」と話しています。ただし、総じて「成約状況は悪く、結局初期費用を下げて決まっている」ということです。
足元では明るい材料がなかなか見当たりませんが、今後の市況には期待する声が聞かれました。都営新宿線・大江戸線沿線を商圏とする業者は、「来春は異動を増やす方向の企業が多い」と予測。それに伴い賃貸需要も伸びる、とみています。他にも法人の絡む賃貸需要について、「東日本大震災後の落ち込みからは回復した」(同文京区)、「新築マンションが募集から1カ月半で満室になったが、その7割が優良企業の借り上げだった」(同墨田区)との声が挙がりました。