近い将来、中古が新築を上回る日が来ると業界内では言われていましたが、2016年に首都圏で販売された新築マンション戸数を中古マンションの成約件数が上回りました。2016年の首都圏中古マンションの成約件数は3万7189件(前年比6.9%増)で、2016年の1年間に供給された新築分譲マンションは3万5772戸(前年比11.6%減)。中古マンションが新築マンションを1417戸上回っています。
なぜ、中古が新築を上回ったのかについては、まず、中古に対する消費者の意識変革が理由に挙げられます。「新築マンションのモデルルームに来場される人に聞くと、リノベーション済みの中古マンションも候補にされていて、駅近だと中古を選択する人も多い」(大手不動産仲介会社営業マン)。若い世代を中心に、中古でも自分なりのカスタマイズをしたり、リノベーションのメニューを選んだりすることで、個性ある住まいを手に入れており、むしろ画一化された新築マンションでは、魅力が乏しくなっている現状もあるようです。
もう一つの理由は、新築分譲マンションの価格高騰による敬遠です。地価や建設費の高騰で、2016年の新築マンション平均価格は5490万円(前年比0.5%下落)。価格が割高な東京都区部の供給が落ち込んだことで、昨年に比べ価格はやや下落していますが、一般サラリーマンの平均年収420万円(2015年国税庁民間給与実態統計調査より)の13倍を超しており、5000万円を超す物件価格では手が出ません。
これに対し、中古マンションの平均価格は、3049万円(前年比5.4%上昇)。平均年収の8倍以内であり、日銀のマイナス金利政策による住宅ローンの低金利をうまく利用すれば、若年層でも手が出る価格帯です。これに加え、前記したように今の若い層では「新築礼賛」「中古アレルギー」といった、50~70代が持っている固定観念はなくなっており、今後も堅調な動きを見せていきそうな気配です。しかし、中古マンションの価格は4年連続上昇しており、3000万円台となるのは1994年以来22年ぶり。成約数が今後まだ伸びていくと、需要と供給のバランスから価格の上昇は避けられなくなる点にも留意しておきたいところです。