8月12日、大手仲介会社の三幸エステート、三鬼商事による都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のオフィス市況調査が発表されました。調査対象は異なりますが、いずれの調査結果でもオフィス需要の低迷は続いています。ただ、空室率の上昇は小幅にとどまり、コロナ後のオフィス戦略を見据えた需要も見られました。
三幸エステートが公表した7月・大規模ビル(1フロア面積200坪以上の賃貸オフィスビル)市況によりますと、都心5区の空室率は12カ月連続で上昇し、3.26%(前月比0.03ポイント上昇)。上昇傾向は続いていますが、小幅な動きにとどまっています。一方、空室率の先行指標となる潜在空室率(現空床に加え、テナント退去前の募集床も対象)は18カ月連続で上昇し、同0.22ポイント上昇の7.49%となりました。
需要の中心は、アフターコロナを見据えたオフィス戦略に基づくもので、同社は「出社率の低下とフリーアドレス導入を前提に執務スペースを縮小する一方、オンライン会議に対応した設備やカフェスペースなどの非執務エリアを充実させる傾向が見られる。空室率の上昇ペースを緩める効果は期待できる」と分析しています。
都心5区における募集賃料(共益費込み、月額・1坪当たり)は2カ月連続で低下し、同177円減の2万8720円。募集面積は60万坪を上回り、借り手側の選択肢が多い状態が続いています。早期のテナント誘致のために、賃料引き下げやフリーレントなどの条件緩和を行う動きも広がりを見せています。
また、三鬼商事が公表したオフィス調査によりますと、7月の都心5区の平均空室率(現空床に加え、募集床も対象)は17カ月連続で上昇し、6.28%(同0.09ポイント上昇)となりました。大型空室の募集開始、グループ企業の集約に伴う解約の動きはありましたが、本社移転による成約も見られ、1カ月間の空室面積の増加は約6700坪にとどまっています。(調査対象は基準階面積が100坪以上の主要貸事務所ビル、調査数は2592棟)。
区別の平均空室率で最も上昇幅が大きかったのは港区で、同0.25ポイント上昇の8.30%。港区に加え、中央区、千代田区も上昇しました。平均空室率は中央区が5.60%(同0.19ポイント上昇)、千代田区が4.54%(同0.03ポイント上昇)で、都心5区の平均賃料(月額・1坪当たり、共益費は原則含まず)は2万1045円(同115円減)となり、12カ月連続で低下しています。