住宅新報が年2回実施している4大都市圏家賃調査がまとまりました。今回は新型コロナウイルス感染症の影響である第7波が減速傾向になった9月1日現在の数字となります。行動制限のないイベントの開催など、これまでの日々を取り戻しているかのように見えますが、賃貸現場の状況はどうでしょうか。
東京圏のマンションの平均成約賃料は、ワンルームタイプが7万4614円で前回調査(2022年3月1日時点)比0.34%プラスとなりました。1LDK~2DKタイプは11万317円で同0.35%プラス。2LDK~3DKタイプは13万7926円で同0.04%プラス。マンションは、すべてのタイプで上限価格、平均価格、下限価格がプラスとなりました。春に比べてプラス0.5%を超える上昇もあり、横ばい傾向が続いているものの若干の上昇も見られます。
アパートの平均成約賃料は、1K~1DKタイプで6万4716円で同0.36%プラス。2DKタイプが8万8082円で同0.24%プラスとなり、アパートもすべてのタイプで上限価格、平均価格、下限価格がプラスとなっています。テレワークの普及などで1Kなど狭いタイプの需要が低下している状況は継続中ですが、中央線沿線での上昇がプラスをけん引しているようです。
市況全体としては、シングルや単身の動きが鈍く、「ユーザーにお金がない、収入が上がっていない」と指摘する事業者も多いようです。他方、強気の値段の新築を決められる層もおり、郊外駅では都心からの住み替え需要が見られますが、単身よりも2人暮らしで賃料を抑え、広めの部屋を探すという動きが目立っています。コロナ禍直後よりも経済的、マインド的な冷え込みが進み、格差が発生しているようです。
しかし、前回調査時よりも「礼金ゼロ」「フリーレントあり」物件が増えたとのコメントは多く聞かれました。一部ではありますが、「法人(社宅)の動きが出てきた」「学生需要が戻りそう」など明るい材料もあったようです。また、新型コロナウイルス感染症の影響が一息ついたとは言え、移動に尻込みする層も多く見られました。「引っ越ししたいが、せっかくこの地域の医療体制に慣れているのにと考えると二の足を踏む」(30代女性)という声もありました。