国土交通省は不動産投資市場の成長に向けたアクションプランを策定しました。CRE(企業保有不動産)、リート市場、投資環境、人材育成の4つの分野における改革が大きな柱となります。特に投資環境改革では、不動産投資運用の総合的な評価手順(デューデリジェンス)を示したガイドラインを策定します。世界的潮流のESG(環境・社会・ガバナンス)投資については、認証項目の整備、鑑定評価への反映手法を模索するとしています。
同プランで特徴的なのは、不動産投資家の投資環境の改革に関連して、投資家サイドの目線に立ち、多様な投資を呼び込めるよう国内の投資市場の魅力を高めることが指摘されていることです。
まず、不動産投資運用の総合的な評価手順(デューデリジェンス)を示したガイドラインの策定では、企業の資産価値を適正に評価する手続きを整備します。不動産投資を行う資産運用会社などが、より透明性のある資産運用を行え、機関投資家にも投資商品や資産運用会社の比較検討がしやすい投資環境を整えるということです。このガイドラインは、機関投資家、ファンドマネージャー、事業者、有識者で構成されるプラットフォームにより策定し、その後も適宜モニタリングを行い、改定を行うとされています。
また、三大都市圏と地方中枢都市も含めて、オフィスと住宅市場の成約賃料のインデックスを提供します。国内不動産市場の透明度の向上(民間調査で日本は透明度19位)と情報発信の強化に向け、不動産をより一般的な投資対象にするためです。
リートの多様化推進に向けては、ホテル、物流施設、ヘルスケア施設などのオペレーショナルアセット(事業利用などで収益を得る物件)に関する情報や指標についての充実化のための方策を検討し、資産運用業などのグローバル化も推進していきます。リート市場改革では、世界的潮流となりつつあるESG投資を見越し、環境性、健康性、快適性に優れた不動産について、認証制度と鑑定評価への反映の仕組みを構築します。
ESG投資については、5月に改定された金融庁の「日本版スチュワードシップ・コード」(責任ある機関投資家の諸原則のことで、法的拘束力はない)にも、企業価値に影響を及ぼすと新たに文言が盛り込まれました。同省では、環境負荷低減と共に空調や採光、水環境など、認証項目を整備。キャップレート(還元利回り)や賃料に与える影響を考慮しながら、鑑定評価への反映手法を模索するということです。
同省では20年頃までにリートなどの資産総額を倍増し、30兆円を目指すとしています。