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くすぶるサブリース、シェアハウスに〝飛び火〟 投資家700人超が被害に

2015年1月の税制改正当時、相続税対策などでアパート経営を始める人が急増。管理会社が転貸借する形態で、家賃保証などを巡り「サブリース問題」が注目されました。その問題がいまだにくすぶる中、昨年末にサブリースで女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ(東京都中央区)がオーナーに賃料を払えなくなった事態が明らかに。この問題が従来と違うのは、「投資家向け物件」「シェアハウス」の点などにあります。

同社では、後にオーナーとなる投資家への物件売却益を、従前オーナーに支払う賃料に振っており、物件を売り続けなければ事業の破綻は目に見えていました。仮に入居者へ8万円で賃貸しているケースでは、高利回りを謳うため、オーナーに10万円の賃料を払います。その差額2万円分は、物件売却益から得ています。例えば、8000万円の価値の物件を新たな投資家へ1億円で売却したとして、この差額2000万円の売却益を従前オーナーへ賃料として充当して支払う形です。

この売却益で賃料を賄えればいいのですが、管理物件数が増え、もしくは、新規物件が売れず、入居稼働率も低下すれば、投資家へ8%の高利回りを謳っている手前、賃料を支払えなくなります。だから、新規物件を建て続け、売り続ける「自転車操業」のビジネスとなっていたわけです。

昨年10月、取引先の金融機関が融資態度を変えたことで破綻を追い討ちしました。資金繰りの悪化には、この不動産売買事業の経営判断の誤りや、脆弱性にあったようです。また、シェアハウスの入居者は、その半数が1年未満に退去する、高い回転率のビジネスであり、継続的に入居者を確保しづらいリスクもあります。結果的にはサブリースが問題の矢面になりましたが、このビジネスモデル自体に無理があったのではないか、との声も漏れ聞こえてきます。

スマートデイズについては、親会社のオーシャナイズ代表の菅澤聡氏が社長に就任し、再建策を検討中の状況です。そうした状況について国交省に聞くと、「詳細な事情がまだ伝わってこない。新たな事業再生プランなどを待ち、現段階では事態の推移を注視したい」と様子見の構えです。

今回の事態は、これまでのサブリース問題と様相が違うようですが、700人以上と見込まれるオーナーが被害に合っていることは事実です。また、一部の事業者の問題によって業界全体の足元をすくわれかねなません。国交省や業界団体では、他のサブリース物件のオーナーや入居者の不安感を取り除くため、事業者の注意喚起などに努めていくようです。

サブリースでは、一個人である家主と、専門知識を持つ事業者が借主となり、住宅の一般的な賃貸借と違った、いわゆる「ねじれ」構造となっています。オーナー側が無自覚にアパート経営を始めている面も、問題を大きくする要因の一つでしょう。管理会社に任せきりにせず、賃貸「経営者」の意識を持つ必要があります。オーナー側からのトラブル防止策としては、適正な賃貸管理を約束する登録事業者や同協議会会員社を管理業者の選択肢の一つとして考えることも方法となります。各地の勉強会などに参加して知見を深め、オーナー同士が情報交換をすることも、資産を守る有効な方法となります。

 

【経緯】

スマートデイズの問題は、賃料支払いが困難になったことが今年1月に同社が開いたオーナー説明会で公になったことで発覚しました。2017年8月にオーシャナイズと資本提携するなど支援策を取り入れましたが、昨年10月に取引先の金融機関が融資方針の変更を通知し、資金繰りが悪化。前社長の大地則幸氏が説明責任を果たさず、今後の賃料支払いや保証などに関してオーナーに不安が生じ、問題視されています。