国土交通省は9月21日、都道府県地価調査(2021年7月1日時点、基準地数2万1443地点)を公表しました。全用途平均は前年比△0.4%(2020年△0.6%)となり、2年連続で下落しています。新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした地価の下落傾向は、依然として商業地に色濃く出た一方で、三大都市圏で名古屋のみV字回復をみせるなど、新たな動きもみられました。
全国的に地価下落は継続しましたが、用途別でみると、住宅地の全国平均は△0.5%(△0.7%)で、下落幅は昨年より縮小しています。堅調な住宅需要により都心部の希少性が高い住宅地では上昇が継続し、昨年より上昇した地域の範囲も拡大しました。
コロナの影響が初めて大きく表れた昨年の同調査でもプラスを維持した地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)は、住宅地が+4.2%(+3.6%)となり、昨年より上昇の勢いを強めています。特に、札幌市の住宅地は+7.4%(+6.1%)に上昇し、地方四市内だけでなく、全国の県庁所在都市の住宅地で最も高い上昇率となりました。札幌市の住宅地は、鉄道駅徒歩圏の利便性が高い地域を中心に需要が堅調。中央区とその隣接区のほか、相対的な割安感のある手稲区、厚別区などの周辺区にも需要の広がりがみられます。
住宅地で変動率がプラスになった都道府県の数は7(北海道、宮城県、東京都、石川県、愛知県、福岡県、沖縄県)で、20年の5から増えました。このうち住宅地で最高となったのは沖縄県で+1.6%(+4.0%)。上昇率は落ちたが沖縄は6年連続で住宅地の都道府県別トップとなっています。
底堅い需要に支えられ、エリアによっては上昇度合いを高めている住宅地は、コロナの影響は軽微だったといえるようです。対して、商業地の全国平均は△0.5%(△0.3%)で、昨年より悪化しています。東京圏の商業地は+0.1%(+0.7%)でかろうじてプラスを維持したものの、大阪圏は△0.6%(+1.2%)でマイナスに転落しました。
コロナ禍直前までインバウンドで活況にあった大阪圏は特に反動が大きく、大阪市道頓堀地区の商業地「中央5-3」(なんば駅230m)は、m2当たりの地価が1900万円で、△18.5%。商業地で全国1位の地価下落率となっています。観光客の激減でテナントの撤退が相次ぎ、物販や飲食店舗の収益性が大きく低下したことが影を落としているようです。