国土交通省の伊藤明子住宅局長は9月1日に、国土交通省建設専門記者会向けの就任会見を行いました。伊藤局長は安心R住宅について、団体登録の開始に備え9月下旬に告示を予定しているとしながら、要件について「まず動かしてみて、何年か経って変更することもあり得る」と語っています。現在の要件は、耐震性とリフォームに加え、インスペクションとされています。耐震性については「熊本地震でも、昭和56年以前のものは問題があることは証明された。まだ900万戸残っている」と危機感を示しました。今後のリフォームの動きについては「今後は健康増進効果なども追求するリフォームが求められてくるだろう」と語っています。10月25日から施行される改正住宅セーフティネット法については、これまでの公営住宅とは全く異なり、市場活用して民間を利用するという点で主客が逆転する制度だとした上で、厚生労働省や居住支援協議会などとの連携協力で進めていきたいとしました。「登録制度により幅広く住宅を確保することができるだろう。当面は、制度をうまく動かし、魂を入れていくことに専念する」と語っています。
また、サ高住について、事業者に提案している持論として「持ち家を開けっぱなしのまま、入居する高齢者が多い。事業者や倉庫業者などと連動しながら、この空き家を賃貸するなど、うまく活用できればよい。高齢者のサービスも向上するはず」と新たな事業展開への要望を語りました。税制要望で空き家の買い取り再販での減税を敷地にも拡充したことについては、「そもそも更地を買って家を建てる場合には減税となることを考えれば、イコール・フッティングになっていなかった」としました。空き家対策については、除去すべきものと使えるものを的確に判別した上で取り組むべきとしながら「全国連絡会議ができたばかりで期待できる。しかし、これを一粒飲めば治る、というような特効薬のない問題なので、じっくりと解決に当たりたい」と慎重な姿勢を見せました。
さらに、建築基準法については、ストック活用という観点からの古民家活用や保育所への転用で、現状の用途変更の基準を「厳しすぎる。何ができるか考えなければならない」と、見直しの検討を示唆しました。昨今、相続税改正の影響などで貸家が乱立している現状については「優遇措置もないのに、規模の大きくない賃貸が増えている」と懸念を示し、需要に合わない供給はリスクが大きいとしながら「まずは土地・建設産業局と相談し合いながら、実態をヒアリングしていきたい」と実態把握の調査を行う姿勢を明らかにしています。