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2013年、住宅分野の本格回復なるか

2012年は新しい態勢づくりの年と言われ、米中や欧州諸国に続き、我が国でも12月の衆議院総選挙で自公連立の新政権、安倍晋三内閣が発足しました。日本経済に関しては、昨年後半からの減速傾向を断ち切り、成長軌道に乗せることができるかが課題となります。住宅・不動産市場は政策的テコ入れで比較的堅調に推移していますが、世帯所得の減少や雇用不安で予断を許さない状況が続いています。新年に持ち越された13年度予算・税制改正の論議は1月中盤から本格化、焦点の消費税増税への対応もこれから具体化作業が進み、経済活性化のためには、内需の柱である住宅・不動産の活性化が欠かせません。復興需要と共に、内需を起爆剤とした経済成長の歩みを確かなものにできるかがポイントとなります。

13年度税制改正と3党合意の行方は

新年の住宅・不動産業界の事業環境を大きく左右するのが、税制改正と予算です。今回の改正の焦点は、昨年8月に成立した消費税増税法案(14年4月から現行5%を8%、15年10月に10%に2段階引き上げ)での「住宅取得」の取り扱い。引き上げには経済成長要件なども設けられていますが、消費税増税法案を巡って民主、自民、公明の3党が合意した際、住宅市場に与える影響が大きいため、「13年度以降の税制改正及び予算編成の過程で総合的に検討すること」と、「8%への引き上げ時及び10%への引き上げ時にそれぞれ十分な対策を実施すること」でまとまった経緯があります。その中身が1月中盤から本格化する税制論議で固まってきます。業界側は、住宅購入者の過大になる負担を軽減するため、「現行の5%を超える負担増加分については、消費税法の枠内で還付する」ことなど、実質的に消費者の負担が増えることがなく、かつ確実に実行(住宅ローン減税などでの対応ではなく)される制度を求めています。この背景には、97年の消費税率引き上げ(3%から5%に)の際、駆け込み需要が大量に発生し、その反動で新設住宅着工が大幅に落ち込み、業界が大きな打撃を受けた苦い経験があるためです。

住宅需要堅調はいつまで続くか

振り返ると、12年の住宅・不動産市況は、全体的には大震災のマイナスの影響がほぼ消え、復興需要などでむしろ前向きな動きが強まってきた年でした。東日本不動産流通機構のデータによりますと、首都圏中古住宅流通市場での中古マンション成約件数は、12年3月から増勢に転じ、1~11月累計では前年実績を10%程度上回りました。中古一戸建て住宅、新築一戸建て、土地もそれぞれ成約件数を伸ばし、取引件数で見る限り、不動産流通市場は過去最高を記録。ただ、平均価格、取引単価ともまだ下落傾向が続いていることが、市況の回復感に結びついていないことから、当面は価格動向がポイントになりそうです。

一方、地価動向は、「全国的に下落傾向が続いているものの、下落幅は縮小傾向。再開発エリアなどでは、下げ止まりから一部上昇傾向」というのが、都道府県地価調査(基準地価、7月1日時点)などの結果です。日本不動産研究所の市街地価格指数(9月末現在)によりますと、「六大都市」の商業地、住宅地の下落率は前期(3月末)比0.1%まで縮小し、最高価格地では逆に0.2%と2期連続の上昇を示しました。半年後の見通しでは、「全国」と「六大都市を除く」は1.5%程度の下落を見込んでいますが、「六大都市」住宅地、最高価格地は0.1%上昇になるとの予想を立てています。20年以上続いてきた地価の下落傾向が下げ止まる転機を迎えるのか注目したいところです。

住宅着工は、リーマンショック後の09年度に77万台まで落ち込みましたが、政策的なテコ入れがあって、10年度は81万台、11年度が84万台と増勢に転じ、12年度は90万戸程度のペースで推移(10月の年率換算は97万戸)しています。この回復ぶりが本物かどうか、その道筋を見極めるのも新年の課題の1つでしょう。

また、回復が期待された12年の新築マンション市場は、景気回復の遅れなどで高額物件を中心に売れ行きの勢いが減速したため、供給ベースでは前年並みとなりました。首都圏の年間(1~12月)発売戸数は4.5万戸前後、近畿圏も2万戸前後に落ち着きそうです。首都圏では、月間契約率が好調ラインの70%を割り込むケースも目立つようになりました。実需層向けは底堅いものの、中高所得層や富裕層、投資家の動きが鈍いことが背景にあります。同時に、勤労者所得の減少で実需層の取得能力が落ちていること、消費増税対策がどう決着するかが未確定であることなどの不安材料も持ち上がってきています。

地域のストック 活用と活性化策

不動産業界にとって、今後注目される分野はストック活用です。地域の盛衰は自らの事業と直結します。地域のストックをどう活用するか、改修して良質なストックとしていくことができるかなど、地域と不動産の活性化が今後の大きなテーマ。そのためのコンサルティング能力の強化が課題となります。

国土交通省が12年度から推進中の中古住宅市場活性化事業(全国に流通促進協議会設立)では、仲介、建物診断、鑑定、リフォーム、金融・保険など不動産取引に関連する様々な異業種の連携を目指しています。それはストック活用と流通の今後の方向を示したものでもあります。地域の問題としては、例えば、空き家です。総務省「08年住宅・土地統計調査」によりますと、全国の空き家総戸数は756万戸(空き家率13.1%)。防犯・防災から経済的損失まで、空き家問題は様々な角度から検討されていますが、具体的な提案ができる地域の専門家が求められています。このほか、シャッター商店街の再生など、解決できない問題も。これらを不動産業の新しい事業領域としてとらえ、問題解決型のビジネスを展開することが今後の可能性を広げることになりそうです。